中島追跡日記

　俺は急いで映画館を出ると隠れながら二人が出てくるのを待った。
すると、不意に来月の上映作が目に入った｡
なんでも、｢年末恒例本格時代劇豪華二本立て｣だと。上映作は｢ジャズ大名｣と、｢ゴルフ夜明け前｣・・・・
いいセンスしてるよな｡
そんな事を考えている内に二人が出て来た｡
しかし二人の様子がおかしいのでよく見ると、磯野がもう暗くなって来たのを理由に帰ろうとしてるのだ。だが花沢がそれを許すはずも無く無理矢理引き止めているのだ。
その時意外な人物が現れたのだ｡
あの往生際の悪い一本毛。磯野波平だ｡
磯野の父親が現れたのだ。
　まさかここで波平が現れるとは・・・・
波平はどうやら、何処かに出掛けていたようだ｡
波平は息子と花沢の交際を反対していたから多分一悶着おきるのでは無いかと思った。
花沢は波平に｢お父様ぁカツオ君とはお食事に行こうと思ってるんですけどぉ、お許し頂け無いでしょうか｣といいやがった。
波平は反対するかと思いきや｢あまり遅くならないようにな｣と言ったんだ｡
？？？どゆ事？？？
さらに花沢はニヤニヤしながら｢凄く遅くなるかも知れませんよ｣と言いやがった！！
それに対しても波平は｢それじゃあ仕方ないな。カツオゆっくりしてきなさい｣と答えた｡
そして波平は逃げるようにその場を去ったんだ｡
磯野はずっと｢一人にしないで！！｣と目で訴えかけていたよ。
そして、花沢は勝ち誇るように波平の背中に嘲笑を浴びせていたよ。
後でわかったのだがこの日波平は会社の社長宅に呼び出されたそうだ。
そして顔じゅう痣だらけの社長から無事定年退職したければ息子と花沢の交際を認めろと強制されたそうだ｡
アイツはどっからそういう手段や知識を学習してくるんだ｡
ホント、恐ろしい奴だ。
捨てられっ子になった磯野は茫然自失のまま花沢に連れられて言ったよ。
　二人は表通りに出た｡
どこで何を食べるつもり何だろ｡
まさか焼き芋じゃ無いよな？
焼き芋といえば森川さんだっけか？
あの人も可哀相だよ｡
なまじ、おいしい焼き芋を作るモノだから花沢に目をつけられてしまったんだ｡
｢オジさん、ここの焼き芋おいしいじゃない。今日からアタシの御用達にしてあげるわ。ガハハハハハハ｣噂はあっと言う間に広がり森川さんの焼き芋屋には、誰も近寄らなくなったよ｡勝手なモノで酷い奴になると｢あそこは花沢毒ガスプラントだ｣なんて事を言う奴まで出て来た｡
森川さんいい人なのによ。結局、森川さん町から出て行ったよ。
｢俺、違う町でも焼き芋屋続けるよ。俺、焼き芋好きだし、買ってくれる人の笑顔見るの好きだから｣
森川さんそういって町から出て行ったよ。
そんな事を思い出している内に二人は目的地についたようだ｡

ステーキハウス｡
｢ファイヤーバッファロー｣

※さすがに店内には入れないので音声のみです｡

花｢磯野君ステーキ大好きでしょ。ここでいっぱい食べて精力付けてもらわなくちゃ。後で、もっとすごいモノ食べさせてあげるからガハハハハハハ！！｣
磯｢・・・・・・｣
磯野も花沢と二人きりじゃ無ければすごい嬉しいんだろうに不憫すぎる｡
店｢いらっしゃいませ、ご注文は・・・・｣
花｢ここはステーキ屋なんだから肉持ってきなさい早く、早く！！｣
店｢では焼き加減は・・・｣花｢ステーキは焼くに決まってるじゃない、チンタラするな！！｣
しばらくすると・・・
店｢お待たせしました｣
花｢ちょっと何コレ！！コレ焼き過ぎじゃ無い。アタシは生っぽいのが好きなのよ！！｣
店｢も、申し訳ありません｣花｢アンタ？何やってんのよ｣
店｢こちらをお下げしょうと・・・｣
花｢馬鹿野郎、喰うに決まってんでしょ｣
店｢・・・・・・｣
こんな調子で花沢は明らかに牛一頭分の肉を喰ったらしい｡(ほとんど生肉だったらしい)
磯野も５、6㎏の肉を食わされたらしい｡
そして支払いは実家にまわしといたそうだ。
とことん親不孝な娘だ｡